不思議と心を和ませてくれる
住宅地の中にある異空間は芸術家たちと
ここを訪れるひとたちの接点
そしてまたここは
関り合う人々と店主が夢を紡ぐ場所でもある
マンションや小学校のある普通の住宅地の中、ちょっとお洒落な作りの普通の家と思うかもしれない。普通の古本屋さんのように表に本を並べてもいないし、古本と書いた大きな看板やのぼりも無いのだから、作品展をしていないときに、この店を探そうとしても見つからないだろう。
と、いっても作品展をやっているときにしか営業していないので、店前の作品展の案内板だけが目印になる。
一目で見渡せてしまえる小さな空間に飾られた作品たちによって、芸術の息吹が醸し出されているのが扉を開けた瞬間から感じられる。ここを訪れる人たちの視線がスペースを飾る作家のひとつひとつの作品に注がれる時、個性と感性が反し、解し、和し、同化してその刹那に作品と作品の間にある空間が埋められてゆく。
どんなものに出会えるのか、自分が何に心を揺さぶられるのか、作者と自分の感性の違いは何所にあるのか、面白いと思えるのか、そんな風なことを考えるだけでも、自分を見つめ直せる時間を与えてくれる空間。
アートスペースの横にある小さな座敷が古本屋スペース。
書籍の棚は美術書と哲学関係書が中心だが、普通の古本屋のように書籍の数は多くない。
作品展の時に書籍を覗いて買って行く人も多いのだろうが、販売はもっぱらインターネット「日本の古書屋」や古書販売会・目録販売で行っているらしい。本の買取は店の休みの関係なく、連絡あればいつでも対応しますとの事。
商売としてはもっともっと可能性があるようにも感じるのだが、「古本屋としてはそこそこやれたらいいんです。ただ今は、海月文庫に関ってくれる人たちの作品が少しでも多くの人に知ってもらえたらと思ってます。」海月文庫の利用者に対して発行しているミニコミ誌『海月通信』のほとんどがアートスペースのこと。
作品展を行う人の中には各地で活躍している人もいるが、有名無名に関らず、店主の思いに通じ合う人たちが知らず知らずに集まるスペースでもあり、作家としても自分の才能を見せ付けるためではなく、作り手も見る側も店主も、みんなで一つの作品展を作り上げて行こうというアートスペースとして位置づけのようだ。
『朝日新聞』や『大阪人』等の雑誌にも取り上げられたことがある。でも、マイペースさは変わらない。それでも海月文庫の存在をより多くの人に知ってもらいたいと思い始めている。
「ここで作品展をしてくれる人たちの作品を、いろんな人に見てもらえるようになりたいから」らしく、あくまでもアートスペースにこだわる。
そんな海月文庫を面白がって、遠く八丈島の父島からわざわざ遊びに来る漁師もいるとか。芸術家だけではなく、個性と感性で人をひきつける力が感じられる。
「いつか、ここで出会えた人たちが有名になったら、海月文庫もその一端を担ったんだなと思うこともあるかもしれないでしょ。」
そんな風に話すオーナーの頭の中には、きっと何年も後に同じように海月文庫で作品展をしている作家と、それを見に訪れた人たち、そして、店主夫婦が、談笑している姿が映っているに違いなかった。
《販売品目》
アートスペース・・・作品展の内容により変わります。
古本屋・・・・・・・・・・美術系全般・哲学・思想・人文系その他
アートスペースでは月二回程度、現代作家による作品展を開催。同時代を生きる面白さの中で、作家、見る側、いろんな立場を巻き込んで行けるような作品展を企画していきたい。日常生活の中で楽しめる作品を中心に。 |