この会社はインディーズレーベルの会社で、沖至(おき いたる)という日野照正らと並ぶ日本のジャズトランペッターがこの会社からCDを出していることで知った。会社が大阪にあること、色んなジャンルのアーティストの作品を提供していることに興味を持ち、代表の清水氏に話を聞きたいと思った。取材を申し込んだのだが、清水代表は忙しく全国を飛び回っているので大阪にいることは少ないらしく、なかなかその機会も訪れなかったのだが、やっと都合をつけてもらって会うことができた。
玉造の大阪女学院のすぐそばにある昭和30年代に建てられたアパートの一室がこの会社の活動拠点。痩せ型で柔和な顔つきの清水代表と話をしていると、その言葉の端々からアーティストたちの可能性を少しでも広げようとする意気込みがひしひしと伝わって来る。アーティストの発掘と、既存のCDショップではない販売店の開拓に、清水氏はずっと一人で日本全国を駆けずり回っている。
たまたま一枚のジャズのCDをプロデュースすることになったためにはじめたインディーズのCD制作販売だったはずが、全国的な販売を手がける必要に迫られたために会社組織にしなければならなくなった、それが会社設立のいきさつらしい。1993年の初めてのCDプロデュースから、ジャズ以外のいろんなアーティストの表現の可能性を広げようとしているうちにどんどんと扱うジャンルが増え、それに伴って制作するレーベルも増えていったといい、「おーらい」から出されているレーベルは現在九つもある。それでもまだ足りないようで、もっと色んなジャンルのものを開拓してレーベルを増やしていきたいらしい。
面白いのは、「おーらい」が表現の可能性を求めているのは音楽だけではない、と言うこと。たとえば「くもをこえて」と言うレーベルは、文学作品と音楽のコラボレーションを扱ったもので、「あらゆる分野の芸術活動を通じてさまざまな国の人々との文化交流を図っていきたい」との思いがそこにある。そのほかのレーベルもジャズにはこだわらない物ばかりに成って来ているようだ。
販売はインターネットでも行っているが、販売はCDショップはもとより、本来CDの販売にはまったく関わりの無い、普通の雑貨屋や本屋、アートギャラリーなどが行っている。これが会社の方針なのかどうかは今ひとつはっきりしないのだが、既存のCD販売店では伝えられないCDの持ち味を伝えてもらうのが目的らしい。ただ、どうしてCD販売に関わりの無かった店が「おーらい」のCDを扱ってくれるのか?それはこの清水代表の人柄と熱意に加勢しようということに尽きるのかもしれない。店だけじゃなくて、大勢の人たちが自主的に販売をサポートしている。また、「おーらい」のホームページもそういう応援団員の様な人が作ってくれたそうだが、片手間で作ったものでないことが分る、しっかりしたもの。
人と人の温かなつながりを感じさせてくれる人情的な付き合いが、この会社そのものを支え発展させている。
清水代表と話をしていると、成り行き任せにしている風でもあり、自分の思っているように成り行きを変えてしまっているようにも感じられるが、とにかく、どんどんと新しいアーティストの可能性を追い続け、どんどんと未開の領域を開拓してみようとする意気込みが見える。
会社としてはライブコンサートなども企画しているとのことだが、良くそんな時間があるもんだと話をしながら思ってしまう。それだけではなく、まだまだ色んな企画があるそうだが、それは順次実現させていくと言うので、それはこれからの楽しみとして待つことにしましょう。
半時間にも満たない取材だったが、妙な充実感を感じさせてくれる、不思議な雰囲気を味わった。これもこの会社の作るレーベルの魔力にはまったことになるのだろうか?
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