大正時代に建てられた長屋の一角を改装しているのに、白壁のせいもあるのだろうか、古めかしさは感じない。大きなガラスの引き戸4枚が店の入り口になっていて、長屋の雰囲気を壊さずに、開放感と気軽に入れる店をアピールしている。
中に入れば奥深い色の出た柱と梁に支えられた高い天井に漆喰の塗られた土壁。飾りの無さがレトロさを引き立たせ、「ただいま」の言葉が似合いそうな懐かしさが感じられる。補強のために柱に取り付けられた白木が、時間の経過とともに他の柱や梁の色に近づいていく様子をついつい思い浮かべてしまうくらいゆったりと和める不思議な空間。店の設計を担当した劇団維新派の舞台などを手がける豊川忠宏氏の「そのものが持っている存在感を生かす」工夫が店の随所に見られる。豊川氏が作ったテーブルや椅子もまた味わい深い。
梅田の店では食べるものが豆類かチーズ程度しかなかったが、この店では会社帰りにサラリーマンやOLが気軽に立ち寄れるようにメニューを増やし、パンやご飯もののメニューも揃えている。
何事にもこだわる店主・立山氏が考えたフードメニューは、彼の作るカクテルと同じように客の楽しみになるだろうが、手間隙掛けてこの値段でいいのかとも思ってしまう。ドリンクメニューには焼酎などを加え、Barに馴染みのない人でも来てもらえる様にしている。もちろん、こんな感じで作ってほしいという注文は大歓迎。
夏場には、扉を開け放って、オープンカフェスタイルの店になる。都会の中で、グラスを掲げて季節を堪能してみるのもいい。
都会の中の時間に置き忘れられたような場所で、ジャズを聞きながら傾けるグラス一杯のお酒は、疲れた心や身体をきっと癒してくれるに違いない。
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