TownPort Infomation on this site for Japanese domestic market only  JAPAN



レポート


「曽爾(そに)高原と兜(かぶと)岳・鎧(よろい)岳」レポート

深まり行く秋、でもまだ関西地方では紅葉にはちょっと早い、そんな11月のはじめ、連休を利用して奈良県と三重県の県境にある奈良県曽爾(そに)村を訪れた。
曽爾村は秋にススキで埋め尽くされる「曽爾高原」で有名。広い広い高原から山の斜面まで一面見渡す限りの2メートルにも伸びたススキが陽に映え、風に揺れて見事な景観を作る。日差しによって様々に表情を変えるこの高原の中でも一番きれいだといわれる夕焼けのススキの姿を今回見に行くことにした。
大阪から曽爾高原だけ見に行くにのなら半日で十分。曽爾高原の後ろの倶留尊(くろそ)山方面に登るハイキングを考えても日帰りで済んでしまうが、今回は曽爾高原の向かいにそびえる二つの奇山、兜岳と鎧岳にものんびり登ることを思いたって曽爾村のキャンプ場で一泊することにした。今回はその前半の曽爾高原のレポート。


鶴橋から10時38分発の近鉄大阪線「青山町」行き急行に乗って「名張」駅に向かう。榛原(はいばら)まではほとんど停車しないが、榛原からは各駅停車になる。名張の一つ手前の駅が「赤目口」で、当レポートにある赤目四十八滝の紅葉狩りレポートの出発点になったところ。赤目四十八滝を抜けて、一山越えると曽爾高原へ向かうバス道に出られるので、ここから曽爾高原を目指す人もいる。この駅までが奈良県で、次の駅、名張は三重県になる。
名張駅には12時近くに着いた。名張は奈良県を越え三重県になってしまうので、ずいぶん遠く感じてしまうかもしれないが、急行なら75分くらいで大阪の中心部まで通える大阪のベッドタウン。バス乗り場のある西口へ出て、パンフレット置きにあった近鉄のハイキングコース案内のチラシ「てくてくマップ」の奥香落高原コースをもらう。
「曽爾高原」行きの直通バスは午前1便、午後1便だけ。曽爾高原へのハイキングでは曽爾方面に向かうバスに乗り、曽爾高原の麓の太良路バス停から1時間ほどかけて登るのが一般的。このバスは1時間に一本ある。曽爾高原への観光客が多いこの時期なら臨時のバスも走っているだろうと思っていたが、残念ながら直通便は2時15分までなかった。
2時間ただバスを待つわけにも行かないので、太良路バス停まで行って曽爾高原まで歩いていこうかとも思ったが、久々にテントなどのキャンプ用具を詰めた重いリュックを担いでいることもあり、とりあえず香落峡(こおちだに) の入り口にあたる青蓮寺湖に行って曽爾高原行きのバスを待つことにする。

香落峡は名張から曽爾方面に流れる青漣寺川の渓谷で、そそり立つ岩の壁がずっと続く名勝。曽爾高原に向かう道中の大半を占める。香落峡の中にも紅葉谷や小太郎岩などの名所があるので、早朝からのんびり歩いてみるのもいいし、朝から曽爾高原に出かけた人は帰りに散策してみてもいい。夏場には川原でバーベキューなどをする人でにぎわうが、その人たちの出すゴミが無造作に捨てられていたりするのが難点。せっかくの景勝地なので、もっとマナーを守ってもらいたい。
バスを待つ短い間に昼飯を済ませようと、駅前に一軒だけあるコンビニに入ったが、ものの見事にご飯類もパン類もない。行楽シーズンは、前もって食品などはちゃんと準備していかなといけません。仕方なく、何かおなかの足しになりそうなものをいくつか買い込んで、それを食べている間にバスが来た。

 

一時間に1本の曽爾方面行きのバスに乗ると、すぐに青蓮寺湖につく。青蓮寺湖は青蓮寺川をダム(青蓮寺ダム)でせき止めて出来たもの。この日は観光客も多く、湖越しの山肌の色づき始めた紅葉を眺めていた。天気予報では確か晴れのはずだったが、大阪を出る時点では小雨、そしてここに来てまた雨が降り出した。のんびりと小雨のぱらつく湖岸に沿った道を歩きながら、香落峡の方に向かう。茶店が出ていて、観光客やハイカーで賑わっているので立ち寄ってみた。湖水を行く釣り用のボートが山の木々の映った水面に波紋を広げる様子を、所々に見える紅葉の背景と一緒に眺めていると、本当に時間がゆっくり流れていくようで心地良い。もっと香落渓の奥の方に歩いていこうと思っていたが、このまま曽爾高原までの直通バスを待つことにした。

バスに乗り込むと、意外と乗客が少ない。この雨で、さすがに曽爾高原に行く人も少ないのかと思っていたら、走り始めてすぐに渋滞。渋滞といっても、車の列が続いているわけではなくて、香落峡(こおちだに)の道が狭くて大型のバスがすれ違える場所が少なく、そこに曽爾高原に向かう乗用車や、戻ってくる乗用車が割って入ってくるので、バスがなかなか進めない。香落峡から曽爾高原に入る太良路のバス停まで来てやっとスムーズに動き始めたが、またファームガーデン前で少し渋滞。やっと曽爾高原第一駐車場のバス停に着いたが、普通なら名張から50分程のところを、倍近くの時間がかかっていた。

 
 

ここから車が数珠繋ぎになった道を避け、少年の家に向かう道から登り始める。こちらの方が近道。半舗装路といったところ。軽快に登っていけるが、徐々に坂がきつく感じ始める。15分もかからないくらいで少年の家の前の舗装路に出る。一面のススキの景色が目の前に広がっている。舗装路を歩いて曽爾高原のススキの中に入って行くのもいいが、そのまま道を横切って向かい側の土手の踏み均された所からススキの中に入って行く。入るともうそこは2メートル近いススキの真只中。踏み跡を頼りにさらに奥に奥にと進んで、やっとススキの生えていない本来の道に出る。さっきまでの小雨が嘘みたいにすっかり晴れて、日差しがまぶしくススキをキレイに輝かせている。ススキの合間に見えている曽爾高原で一番高い丘を目指して進む。丘に登ると、そこには数十人が、目の前の高原と背後の亀山の山肌までを見事に埋め尽くしたススキの壮観な眺めを堪能していた。西側には翌日昇る予定の曽爾の奇山、鎧岳と兜岳が浮かび上がったように見える。だいぶ西に傾いた日差しに照らされた亀山の山頂(亀山峠)への道には、蟻のように人影が連なっている。その峠から二本ボソを通って倶留尊(くろそ)山に行くのが一般的なハイキングコース。

亀山峠から見渡す限りの金色のススキの穂が薄紅くなって波打つ夕焼けの曽爾高原の美しさは幻想的で格別。ここからだと20分もかからない。早速登ることも考えたが、その前に夏場は水をたたえている曽爾高原の中心にある「お亀池」の周辺を暗くならないうちに写真に収め、もう少し時間もあるので、曽爾高原入り口のキャンプ場にテントを預けていくことにする。高原の入り口にある売店を過ぎ、オートキャンプ場の矢印に向かって歩くが、そこは車で埋め尽くされた駐車場。聞いてみると、この時期はキャンプ場としては使用していないとのこと。宿泊なら「少年の家」をと進められたが、翌日の登山のことも考え、だいぶ遠いが兜岳のすぐそばのキャンプ場に行くことにした。そこがいっぱいなら、何処かで野宿をするしかない。日がだいぶ傾いているので明るいうちに着くのはもう無理。でも、少しでも早くキャンプ場に着いて寝床を確保するに越したことはない。と、言うわけで、後ろ髪を惹かれる思いで亀山峠に登ることを諦めなければならなくなってしまった。
この駐車場に入るために何十台という車が行列している横を下っていく。10分ほどでバスを降りた駐車場の前のキャンプ場が見えるが、立ち入り禁止。そのままさらに下る。車の渋滞もここで消える。駐車場の空きを待って、今から曽爾高原に向かっても遅いんじゃないかと、余計な心配をしながら下る。ファームガーデンに着いたときには少し薄暗くなってきていた。ファームガーデンにはレストランと売店がある。屋外にテーブルと椅子が置いてあり、ここで曽爾高原の新しい名物「曽爾高原ビール」が飲める。6種類もあるので何種類かは飲んでみたかったが、のんびりとしている暇もなくトイレを借りただけ。通りを隔てたおでん屋やうどん屋も人が多いので寄るのをあきらめた。

ファームガーデンから鎧岳と兜岳を正面に見るバスで来たのとは違う道を下る。ほとんど真っ直ぐな道で、のどかな田園地帯の風景が見られる。曽爾川まで下りてくる頃にはもうかなり薄暗くなってしまった。葛(くず)方面の矢印に従って小さな橋を渡って、そこからすぐの民家の間の道を入っていくと吊り橋が見えた。この橋が「かずら橋」で、その手前に大きな時計をつけた休憩所がある。橋を渡って坂を登りきるとバス道に出る。左に進むとすぐに郵便局が目印の葛のバス停があり、鎧岳の登山の帰りなのかそれとも曽爾高原から同じルートをたどって下りてきたのか、10人ほどの人が名張方面のバスを待っていた。バスに乗れば40分で名張に戻れるが、明日の山登りのためにキャンプ場へと向かった。ここからの一日が大変な一日になってしまうのだが、それはまたの機会の話として。

運賃と時間
近鉄電車(大阪線)  鶴橋〜名張 980円  時間 約75分(急行)
三重交通バス   名張駅〜曽爾高原(第一駐車場) 810円  時間 約50分
太良路のバス停〜名張駅  720円  時間 約30分







ご意見はこちら mail:mail@tounport-japan.com


マーシーの海釣り日記
 
ウォーク&ハイク
 
ギャンブラー“かっちゃん”