4  「新梅田シティ」

JR環状線福島駅から新梅田シティ
世界的名建築、空中庭園を頭上に頂くツインタワー、スカイビル。このビルを中心に開発された一角が「新梅田シティ」。
大阪駅の北西にあり、この建物を中心に変わっていくこの街を、同じように急激に変化し始めている福島から歩いてみる。


   アクセス JR環状線「福島駅」

JR環状線「福島駅」から歩き始める。JR福島駅周辺は、すぐ南側の路面を阪神電車が走っていたために開かずの踏切があり、一日中渋滞している場所だったのに、阪神電車が粘りで市からの援助を勝ち取って、路面部分を地下にもぐらせたおかげで、渋滞の緩和が図られ、駅前の「なにわ筋」もわりとスムーズに流れている。
阪神電車が地下にもぐったことで、渋滞の緩和だけじゃなくて、軌道の跡地にホテル阪神が出来、大阪駅と福島駅までの環状線の南側の再開発が一気に行われた。
今、梅田ガーデンシティーといわれるこの地域は、梅田地区で最も注目のスポットになっている。しかし、今回は東の梅田方面には向かわず、北に向かう。

福島駅の少し北側に一階が喫茶店になったビルが見えるが、それが「関西将棋会館」。日本の将棋界を代表する棋士たちを輩出する西日本の棋士界の本山。
 
二階の対局室では老若男女の棋士たちが熱く対戦している姿が北側のガラス越しに通りから見えるが、街中の将棋屋のように対局をガラス越しに見るというわけには行かないのが残念。腕試しも出来るらしいので、実力を試してみたい人は一度覗いてみてはいかが?でも、今回はここを覗いて熱戦を観賞しているわけにもいかない。
目的地は新梅田シティだが、このまま向かえば10分程で着いてしまうので、福島の名所も見ておいてもいいだろうから、踏切を渡ったところを左に曲がることにする。

大きな居酒屋の看板を右手に見ながらそのまま道伝いに行くと自然に商店街の中に入る。アーケードはないが、タイルで舗装された通りは洒落た感じ。
駅に近いところは今風の居酒屋や料理店が多い。
しばらく行くと信号があり、それを超えてもうひとつ向こうの信号まで進む。
信号の向こう側のアーチに「聖天通SHOUTEN MOLL」の文字が。
でも、そのアーチはくぐらず右に折れる。


福島は子宝とか厄除けとかの神様「聖天さん」の土地で、駅からの参道が聖天通り商店街になっている。 明治から昭和の初期にかけてはかなり参拝者も多かったようで、大阪の風俗・歴史の紹介がされるときに時折出てくる。
1ブロック過ぎたところに鳥居が建っている。
ここが「聖天さん」。近所の神社や寺のほうが広い、と思う人も多いくらいの決して広い場所じゃない。
この鳥居の向こうに寺門を構え、その前には「聖天尊」の石碑、門を入ると右手に立派な鐘を吊るした鐘楼があり、神仏合体の祭場は鳥居の下をお坊さんが忙しげに行き交う妙な空間を見せてくれる。
聖天さんから元の道に戻り、さっき入らなかった聖天通り商店街に入る。

商店街を突き抜けると、鷺洲の交差点。これを右に曲がり、高速と東海道線の効果の下をくぐって「金襴会中学と高校」そして「清風寺」のある福島7丁目の交差点に出る。金襴会の裏手の「浦江公園」は桜の名所で、花見の人で毎年賑わう。

清風寺の東隣の公園に入る。普通、区や町の境界線は川や道路にあると思うが、この公園の中に北区大淀南と福島区福島の境界が斜めに走っている。昔、斜めに走っている道路でもあったのかもしれない。
 


そのまま北のどっしりとした重厚感のある白い建物に向かう。
これがクラシック音楽のホールとして世界的にも有名な「シンフォニーホール」。
このホールを中心にして、最近おしゃれな店がずいぶん増えてきた。
そんな店の紹介もまたタウンポートのショップガイドで取り上げていくつもり。
シンフォニーホールの裏(北側)が元「ホテルプラザ」。1970年の大阪万国博覧会に合わせ開業した大阪を代表するホテルのひとつだったが、近年の大阪ホテル戦争と呼ばれる厳しい状況のなかで、惜しまれつつも廃業を決定した。
今は家具のショールームになっている。

その北側にはABC朝日放送の電波塔「大阪タワー」。
通天閣よりも高く、もちろん展望台もあるし、大阪を名前に取り入れているにもかかわらず、大阪に住んでいる人でも大阪タワーそのものを知らない人も多い。
そういえば展望台入口がずっと暗いままなので、もう展望台は閉鎖しているのかもしれない。

その隣がABC朝日放送。
かつてはこの放送局に訪れたタレントたちがホテルプラザ内の喫茶店で打ち合わせをする光景を良く見かけた。
朝日放送の通用門のところでは、収録を終えたタレントが出てくるのを待っているファンの姿がある。


ABC朝日放送北の信号を渡り、公園を横切れば医療の専門学校。その先からが「新梅田シティ」のエリア。
プレハブ住宅しか作っていないようなイメージのあった積水ハウスが、ゼネコンとしての総力を結集して作り上げた新感覚のオフィスタウンで、世界に誇る日本の現代建築の筆頭に上げてもおかしくない空中庭園を頂く『スカイタワー』、ホテル用の高層ビル、都会の中の森『中自然』、その東側のガラス張りの三棟のビル『ガーデンビル』、季節感溢れる庭『花野』などで構成されていて、1993年にオープンした。
自然をテーマにした現代彫刻家作品をスペース内にいくつも配し、水や空気の循環を中自然で表現して見せ、あえて野草の生える場所を作ることで季節感を都心で感じられるようにするなど、自然と都市の共存の方法をこのエリア自体のコンセプトとして持たせている。
西側の高層ビルが世界最高級ホテルの「ウィスティン」。このホテルの南側に先のオーナーだった経営破綻した中堅ゼネコンの本社ビルがある。
オーナーは替わっても、最高級ホテルの落ち着いた雰囲気が訪れたゲストをいつも包んでくれることに変わりは無い。このホテルの庭に当たるのが小さな森と川で出来た「中自然」というスペース。
大都会の中で、自然に触れて心が安らげる場所で、当初はリスが放し飼いにされていたが、今でもいるのだろうか?低いフェンスの扉を開けて中に入ると、所々にオブジェが置かれている小道があり、小川が流れている。滝の音につられて奥に進んでいくと、時間によって流れの変わる滝がある。中自然の東側の「ガーデンビル」には2つの映画館や飲食店、雑貨店が入っている。中自然からも降りていける地下街はタイムスリップ感いっぱいの飲食店などが入っている「滝見小路」。
初期型のミゼットや円筒形の郵便ポストなど、レトロ感いっぱいの展示品や内装にこだわり、昭和30年代の街を再現している。当然、飲食店の造りのデザインも懐かしい雰囲気なものにしてあり、ポスターや看板、家のすぐそばにあったような駄菓子屋、交番、散髪屋、お稲荷さんなど、見ているだけでも楽しく落ち着ける。また、中自然の大きな滝を裏側から見るスペースもある。
その上は広場になっていて、昼休みにお弁当を広げる人や、ベンチに座って中自然や花野を眺めている人も多い。
年末の風物詩として定着した巨大なクリスマスツリーはここに立てられ、新年を迎えるカウントダウンでも毎年行われる華やかなイベントに大勢の人が集まる。見上げれば、地上遥かツインタワーの上を渡る、真ん中に大きな穴の開いた屋根。この屋根はツインタワーの屋上からクレーンで吊り上げられてビルの間を登り、このような形になった。空中庭園を下から見るだけでも圧巻。
よくこんなことが出来るなと感心してしまう。スカイタワーには積水ハウスの本社やその他のオフィスが入り、映画の試写会からプロレスまで行う『ステラホール』、人気が高く毎年開催される「人体の不思議展」などが開かれる『新梅田シティミュージアム』、36階と39階にはレストラン、そして40階には地上170メートルで360度大阪平野を見渡せる『空中庭園展望台』があり、夕方からは何億ドルかの夜景の素晴らしさと共に音楽やダンスなどのイベントも催されている。元旦はここで初日の出を拝む人も多いはず。
スカイビルの北側一面にはなるべく人の手をかけずに自然のままの野原をめざした「花野」が広がり、季節ごとに咲く草木やオブジェを眺めて歩けば、都会の中でたっぷりと季節感を味わうことが出来る。
都会の真ん中で、人工的なものではあるが、自然に触れ、懐かしさに触れ、心和ませてくれる空間を与えてくれるこのスペースは、確かにこれからのワーキングエリアの開発の手本になるべきものだと思う。バブル以降の大阪の再開発がどんな形で進められていくのか、そんなことを考えながら、帰り道も考える。新梅田シティの東側の貨物駅を東側に抜けるあの長い地下道を通って大阪駅の北側に出ようかとも思ったが、中津に向かうことにして貨物駅のフェンスに沿って北に歩いた。振り返ると巨大な凱旋門が夕焼けの中に浮かび上がっていた。

世界最高級のホテル「ウィスティン」と「空中庭園」を頂く「スカイビル」、「中自然」という名前の川の流れる庭園、野草が咲く「花野」、地下には「滝見小路」という飲食街などから構成されているエリア。


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