海外の日本食ブームから日本酒が見直されてきています。
日本酒は飲むだけではなく、化粧品や入浴剤といった美容や健康に、また新薬開発やバイオテクノロジーなどの先端の化学や医療科学にも貢献しています。
そんな日本酒のすばらしさを感じるためにといいたいですが、ただ単にちょっと日本酒を味わいたく思い、酒蔵めぐりに出かけます。関西には灘五郷、伏見、奈良の三大生産地の他に北摂、堺など多くの酒造元があるのにめぐらない手はないでしょ。
まずはじめは日本酒の代名詞とも言える灘から。
阪神の御影駅を挟んで東が魚崎駅、西は大石駅の間をめぐるので、ルートは魚崎駅から西に向かうか、大石駅から東に向かうかの2つ。今回は大石駅から東に向かう。
大石駅を降りると駅の前に「灘の酒蔵」のコースが描かれた案内板。コース上にはこの様な案内板やコース表示の看板や石柱などがそこかしこにあるのでまず迷うことはないはず。
駅を出て南の海側に向かう。神戸は北に六甲の山並み、南に海と方向感覚がない人にも優しい町。道路を隔て流れている川は都賀川で堤防の内側が遊歩道になっていて、河川公園のようなもの。この川では鮎の放流もしている。
国道43号線を地下道をくぐって超え、そのまま路を南下して一つ目の目的地「沢の鶴資料館」に向かう。川岸に里桜の木が並ぶ。大石駅から10分も経たない内に、右手に直径2メートルくらいありそうな大きな仕込み桶が垣根越しに見える。そこが「沢の鶴資料館」で、震災で閉館していたものを平成11年に復興オープンさせた。入り口でパンフレットをもらって順路に沿って古道具や模型、ビデオなどを見ていくと、日本酒の製造方法や流通の仕組みなどがわかる。売店ではお酒だけではなく神戸土産なども売っている。
資料館を出ると、狭い敷地に立派な石の鳥居を持つ神社がある。海神を祭る「住吉神社」で、江戸の昔から酒樽を積んだ船の航海の安全を祈願されてきたことだろう。
川岸に戻り、昌平橋を渡ると沢の鶴本社工場の大きな建物や倉庫なので、沢の鶴の敷地内に入ったように感じられ、ガイドマップのような路があるようには思えないが、工場や倉庫の横は一般道路で、橋を渡ってから川の反対側の通りを戻ると確かに民家があり、その家の並ぶ中のガレージのような隙間から一筋東に入り、金属製の水車のモニュメントのある小さな公園を通って、沢の鶴酒造の大型のタンクが並ぶ工場の北側の筋を歩く。この工場の壁には灘の発展の記録などの資料が何点もかけられている。北側は新興住宅地になっていて新しい一戸建てがどんどんと建てられている。この南側には大きな敷地の中で科学技術の面白さを体感させてくれる学習施設「灘浜サイエンススクエア」がある。
ここで気付いたのが、手にしているガイドマップが縦(南北)と横(東西)の縮尺がかなり違うということ。幾つもの駅の間をまとめて書くから当然のことだが、縦の間隔を思い描いて横に歩いていると、このあたりかなというポイントと実際の目的地がかなりかけ離れてしまう。それを頭に入れて進む。
一画に花を所狭しと植えた公園「西郷酒樽花ひろば」を通り、若宮八幡宮に出る。ここから東に向かう路の角に「西郷酒蔵の道」という石標があり、富久娘の工場とコーナンにはさまれた舗装路を歩く。
突き当たりの右手の「灘浜ガーデンバーデン」という温水プールを中心にした温浴施設は、水中歩行やジャグジーなどを使って健康になろうという目標を持った健康ランド。この横に高層マンションが何棟も並んでいる。この施設の公園の空間を斜めに横切って新在家の駅のほうに向かうが、このマンションの駐車場や自転車置き場も酒蔵をイメージさせる白壁風なつくりで景観のことも考慮していることがわかる。
その北側の国道43号線に面したところは「六甲サザンモール」。ディスカウントストアーや飲食店、家具、ペット用品店などが入った大きなモール。国道43号線を渡ればすぐに阪神の新在家の駅。このあたりは国道の上に阪神高速が走っているが、その支柱は灘の酒造りには欠かせない宮水をなるべく堰き止めないように1本足で支柱の間隔も他よりも広くなっていた。阪神淡路大震災のときにそれが災いしたのか倒壊してしまったが、支柱の強度を上げて倒壊前と同じ支柱の間隔で再建されたらしい。
その高速の下をくぐり国道43号線をわたって東に進むと、阪神電車の操車場に一部重なるように昔の酒蔵を思わせる木造作りの建物が出てくる。レストランと「甲南漬本店」と資料館がある「こうべ甲南武庫の郷」。甲南漬は灘の酒粕を用いた奈良漬の商品名。この建物の裏側が小さな日本庭園になっている。
さらに43号線を東に進んで東明の大きな交差店の歩道橋を渡る。この歩道橋の北側のフェンスで囲まれた段のついた小高い丘の公園が「太平記」にも記されている「処女(おとめ)塚古墳」。裏側には処女塚古墳の伝説(二人の男性に慕われてどうしていいのか悩み続けて女性が死んでしまった)に基づいて歌われた万葉の歌人田辺福麻呂の歌碑もある。
歩道橋を渡っている途中から「神戸酒心館」がみえる。ここには醸造棟(見学予約が必要)の他、レストラン、売店、コンサートや美術展などが開かれるイベントホールがある。その前を通り過ぎて次の角を左に折れる。すぐに橋が見えるがその橋の手前を右に曲がると、突き当りの一段高くなった道路の手前に昔ながらの製法で仕込まれる酒「灘泉」をつくる木造の酒蔵「泉有之介商店」が見える。ここの見学は10名程度の団体で予約とのこと。
突き当たりの道路を東に。海側に目をやると神戸製鋼所の巨大な工場の赤茶けた屋根が見える。ガイドマップでは川を渡ってすぐに北に向かうことになっているが、そのまま道路をまっすぐに進んで古タイヤが山積みされた自動車修理工場を過ぎて大きな交差点を北(左)に曲がるとすぐに「瀧鯉蔵元倶楽部酒匠館」の看板が白壁の下に立っている。立て札の南側の道を入ると酒匠館のある「木村酒造」の入り口。NHKの連続ドラマのロケに使われた趣のある酒蔵。
道を戻り、少し北に進んでから誘導標識に向かって道路を渡り、あとは少し長い一本道。剣菱、菊正宗、白雪と有名なお酒の大型工場が並ぶが、静かで、さっきの赤茶けた風景とはまた違うコンビナートの雰囲気。
石造りの菊正宗本社ビルの前を通り、誘導標識に促されるように「白鶴酒造資料館」に着く。ここは白鶴酒造本社の広大な敷地の中にある資料館で、昔の酒造りに使った道具やビデオで酒造りの歴史を紹介している。
そのまま東に進み、菊正宗の工場の壁にかかっている標識に従って右に折れ、左に折れて「菊正宗酒造記念館」にたどり着く。ここも平成11年に復興オープンした。重要文化財に指定された酒造道具などが置かれている。同じような歴史を持つ酒蔵が多い中で、どうしてここの酒造道具が重要文化財なのかと考えてみると、そういえば工場の横に宮内庁御用達の文字があったことを思い出す。
さらに東に進んで住吉川に。この川の両岸も公園になっている。そこに架かる島崎橋を渡り暫く行くとコーナンがある。その手前の角が櫻正宗の本社工場。角を左に曲がってコーナンの隣にあるのが「櫻正宗記念館 櫻宴」。ここはレストランが中心になった施設で、売店や資料展示が行われている。
コーナンに戻り、その角を左に。浜福鶴の煙突が高くそびえている。ここの「浜福鶴吟醸工房」ではこれまでの歴史を感じさせるものではなく、近代化された工場での醸造を見ることが出来る。
ガイドマップに記されている主な施設めぐりはこれで終了。
帰りは菊正宗酒造記念館のある住吉川のところまで戻って少し海側に行けば六甲ライナーの南魚崎駅。そこから阪神の魚崎駅、JRの住吉駅に。または櫻正宗記念館の前の道をまっすぐに行けば阪神の魚崎駅に到着する。
開館時間もバラバラなので、このコースをゆっくり見るには午前中から歩き始めた方がいいでしょ。試飲もそんなに量を飲ませてくれるところはありませんが、次の酒蔵に行くまで飲んだお酒の余韻は味わえるでしょう。是非とも宮水の粋を感じてきてください。
ただ気に入ったお酒でも持ち歩くには重いですから、送るなり、帰りの駅や自宅附近で購入できるところを訊いてください。
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