11 「阪神尼崎駅周辺」

市外局番が[06]なので大阪の一部だと思っている人も少なくないが、駅前にとまっているタクシーのナンバープレートは全て神戸ナンバーの、れっきとした兵庫県の尼崎市。
日本一早い阪神タイガースの優勝マジックを出す商店街が有名になったが、それだけではなく、城下町の歴史と庶民の活気が感じられる町、重工業で発展し阪神工業地帯の一角を占めた町でもある。そんな町がここ数年で駅前の再開発が進み、表情を大きく変えようとしている。そんな尼崎の中心地、阪神尼崎駅周辺をご紹介します。

阪神尼崎駅

ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)の開園にあわせて阪神尼崎駅には特急が停まるようになった。これは阪神の支線で「阪神尼崎駅」と大阪市此花区の「阪神西九条駅」を結ぶ「阪神西大阪線」があるためで、大阪環状線とUSJの表玄関「ユニバーサルスタジオ駅」のある桜島線(夢さき線)との連絡駅「JR西九条駅」とつながっている。また、この西大阪線は数年以内に難波まで延長され近鉄と相互乗り入れをする路線になるので、阪神尼崎駅は「梅田」まで10分以内、「難波」までも20分以内の超便利な駅ということになる。さらに相互乗り入れで考えれば近鉄の名古屋から山陽電鉄の姫路までを結ぶ路線を阪神が保有することになる。ここが神戸から来たときに梅田に行くのか難波に向かうのかの分岐駅に当たるわけで、特急効果からか、西大阪線効果なのか、駅周辺の開発はすさまじい。
一番大きく様変わりしたのは駅の北東部。改札を出て右が北側の駅前広場。以前はタクシーや市バスの乗り場がこの広場の半分を占めていたが、それらを広場の東側に移設した。 今では花壇や噴水が整備され、レンガ舗装されたきれいな広場になっている。バスやタクシーの乗り場には屋根がかけられ、その屋根の部分が広場になっていて、エスカレーターで上っていける。この広場もレンガ舗装され草木が植えられた立派なもの。さらに広場から東に噴水も備えられた幅10m以上の歩道橋が延び、庄下川を超え、北に折れて2号線をも超えて「尼崎総合文化センター」まで直結した空中回廊になっている。



尼崎総合文化センターはいわば尼崎の文化芸術の中心で、様々な文化教室が催され、地域放送局「FMあまがさき」もここにある。また、このセンターのホール「アルカイックホール」はコンサートや演劇の舞台として広く利用されていて、尼崎だけではなく阪神間の重要な施設のひとつ。その東側に凛として建っている白亜の高層ビルが「ホテルニューアルカイック」。ニューオオタニグループのホテルで、阪神間のホテルの中で人気は高い。 庄下川横のバッティングセンターだった場所は書店やエステ、沖縄の物販店、バイキングや韓国料理の飲食店などの入った「アマゴッズ」というショッピングビルになり、その東側には30階級の高層マンション、北側には10階建てクラスの4棟のマンションが建ち、空中回廊はその周りに建つこれらのマンションや商業施設とも連結されている。住まいと駅の間を信号待ちも車や自転車に悩まされることもなく行ける便利さ。歩道橋で駅近隣の商業施設とつながっている駅は珍しくないが、居住型都市を考えた場合、これからはこうなっていくべきなのかもしれない。



空中回廊を降り、庄下川の東側の道を南に向かう。阪神の高架をくぐり抜けると左には阪神の操車場の赤レンガの建物があり、右には高速バス乗り場のある阪神尼崎駅の南口につながる橋があり、そして正面には石垣が再現された「尼崎城址」。今は石垣の上に図書館が建っている。江戸初期にここに城が築かれて城下町として発展してきたので、この駅周辺が今でもJRの尼崎駅周辺や阪急の園田といったところよりも賑わっているあたりまえか。
川沿いに歩いて図書館を過ぎ、右に折れて橋を渡る。信号の右角に風情のある店構えをした飴屋は遠方からもわざわざ買いに来る人も多い評判の飴らしい。 そのまま西に向いたスロープを下りまっすぐ行く。2つ目の信号を過ぎると街の雰囲気が変わる。立派な門や本殿を備えた寺が並んでいる。尼崎城を建てる際に城の敷地内にあった寺をこの一画に移転させたという「寺町」。今でも立派な仏塔や多宝塔を持つ10以上の寺院が残る。この辺りの民家もまた、町並みを壊さないように、板塀や丸太格子を用いるなど、江戸から続く景観を大切にしているのがよくわかる。しかし、ここにも時代の波は否応なく押し寄せていて、最近もこの一画に高層マンションの建設話が持ち上がり、地域住民と法を盾に建設を迫るマンションメーカーとのお決まりの対立の様相になったが、争うだけではこの町を守ることにはならないと、結局、寺がマンション予定地を買い取ることでこの町の姿を守ったというエピソードもある。




上寺町を西に抜け阪神の高架をくぐるとすぐにアーケードのある商店街に入る。この商店街が阪神タイガースの優勝マジックを日本で一番早く出すところとして有名な「中央商店街」。阪神尼崎駅前から西に1番街から5番街まで500mも続く立派な商店街。店舗の入れ替わりも激しいようだが、その分活気があり、人が多い。この商店街の西端で南北に交差している商店街が「三和本通」で生鮮市場の「三和市場」がこの南側になる。この商店街も人が多い。が、この西に「サンロード」という商店街があるが、こちらは残念ながらほとんどの店がシャッターを下ろしてしまった。そんな中で、若い人が新しい商売を始めかけているのも見受けられ、この商店街がふたたび賑わう日が来るのか楽しみ。
中央商店街を通り駅に向かう。この商店街の北側から2号線の間に飲食店が多く、人気店には夕方から行列が出来ている。南側には15mもある大きな鳥居を持つ本戎宮があるが、この敷地でこの鳥居の大きさはどうなんだろうかとも思う。また駅の西側の高架下の辺りが風俗街で、夜には酔客で賑わう。 工業地帯から居住地域へと変化しようとする町。歴史とレトロと活気の混在した町。駅の南側のビルの建設も始まっているこの町は、まだまだ良いものを残しながら発展していく町に違いない。



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